不随意(ふずいい)運動と呼ばれる無意識の手の振動をいいます。こうした意思とは無関係な体の動きをなかでも規則正しい往復運動のことを振戦(しんせん)といいます。
時には、筋力の低下や運動失調によって動きが不安定になることも「震える」と表現されることがあります。
振戦が生じる代表的な疾患には、パーキンソン病と本態性振戦(ほんたいせいしんせん)があります。
パーキンソン病の振戦は左右どちらかの指先に始まり、ひどくなると全身に及びます。パーキンソン病の振戦の特徴は、安静時に強く、動作を始めると逆におさまることです。
一方、本態性振戦では動作をしようとすると震えがひどくなり、安静時にはほとんど消失します。
パーキンソン病は高齢者に多い病気で、振戦のほかに動きが鈍くなったり体が硬くなったりします。一方、本態性振戦のほとんどは若いうちに発症し、振戦のほかには症状はありません。
パーキンソン病は診察のみでも診断できますが、他の類似の病気を除外するために頭部CTやMRIなどの検査を行います。
高齢者でとくに注意すべきことは薬の副作用です。たとえば気管支拡張薬は震えを増強します。
また、抗精神病薬や胃薬と呼ばれるものの一部などで、薬剤性パーキンソン症候群とよばれる似た症状が出ることがあります。
パーキンソン病でも本態性振戦でも、手の震えは精神的緊張によってひどくなるので、ストレスを避けることが大切です。 とくに患者さんにとって周囲の目は非常に気になるものなので、家族は震えをあまり指摘しないように心がけます。